調性の意味
2018.10.31
サマリー:調性(キー)の違いからくる曲の印象の違いは楽器の影響もあるかも知れませんが、究極には人間の脳の問題です。

調性は曲の印象と関係があるのでしょうか?ここで言う調性は短調・長調などのモード・スケールのことではなく、キー、すなわち基音の周波数のことです。

クラシック畑の人は調性によって曲の性格や印象が大きく変わると言います。私が子供の頃読んだ本ではベートーヴェンは変ロ長調を黒で表したと書いてありました。現代でも、ハ長調は白だとか、変ホ長調はピンクだとか言う人がいます。ネットで「調性 色」で検索すると、この手の話がたくさん見つかります。そして、色で表せるくらいの違いがあるのだから、調性には重要な意味があるのだ、という人が多くいます。

私もはじめはそう思い込んでいました。私は子供の頃ピアノを習っていたのですが、ハ長調に対しては白・標準・平明というような印象があり、シャープ系の調は明るく元気な感じ、フラット系の調は柔らかい感じを受けていました。

また、1975年ごろの松任谷由実(当時は荒井由実でした)の曲を集めた本には「ピアノの変ホ長調は美しい響きがある」と書かれていました。なお、書いたのはその本の著者であり、松任谷由実さん本人ではありません。

しかしその後、私の中で、調性にはそのような意味が本当にあるのか?という疑問が生じてきました。

ひとつは、30代でデスクトップミュージックを始めたときです。コンピューターが音を作るわけですが、周波数は設定でいくらでも変えることができるのです。真ん中の A を 440Hz ではなくだんだん上げてみる。そうなるとたとえば A major と B♭ major はそんなに印象に差がないことがわかります。

もうひとつは40代、50代になって絶対音感がおかしくなってきてからのことです。私には真の意味の絶対音感はありませんが、音を聞けばこれは C だな、とか、G だな、とだいたいわかったものです。しかし年をとると C に聞こえていても実は実際は B♭だったということが頻繁に起こってきたのです。アタマの中で音を鳴らしてみて「Cだな」と思っても、実際は B♭なのです。そうなると、調性になんの意味があるのか、とますます思えてしまうのです。自分の中で「白・標準・平明」の印象であった音が実際の楽器を鳴らすと B♭ で、それが「白・標準・平明」の響きに聞こえるのです。

調性によって印象が変わる理由を、うるさい人達は楽器の性質で言い表そうとします。たとえば管楽器は♭系の調が演奏しやすいのでその調だと演奏しやすくなりスムーズな演奏になる。♯系の調だと演奏しにくいので緊張感が出る。弦楽器は#系で演奏しやすいので#系の曲だと開放弦が使えることもあり、スムーズな演奏になる。♭系は難しいの緊張感のある演奏になる。

それならば、ピストンをすべて開放したときにC音が出るトランペットを作ると、曲から受ける印象が全く変わってくる、ということになりますね。じっさいベートーヴェンのぐらいの時代までは基音が異なる数種類のトランペットがあって使い分けていたようです。それが面倒なのでピストン付きのものが出てきたわけですが。このあたりは実験してみないとわかりません。

余談ですが、ブルーノ・ワルターがあるオーケストラにモーツァルトの交響曲の指揮を任されていたときに、そのオーケストラの演奏を聞いてぶっ飛んだそうです。「モーツァルトに開放弦を使わせるとはナニゴトか!」と。前任者がそうさせていたのです。ま、私もギターやベースを弾くときはできるだけ開放弦は使わないようにしています。音がコントロールできなくなるので。開放弦を使うよう指示してある曲も世の中にはあるのかも知れませんが。

ピアノはいっけんシャープ系の楽器に見えますが、弦を叩くハンマーや弦そのものは均等に並んでいます。ですので、物理学的に測定してみれば、黒鍵だろうと白鍵だろうと周波数が異なるだけで同じような音が出るわけです。「演奏が難しい調だと緊張感が出る」という可能性はありますが、プロの演奏家はどのような調でも同じように演奏できるように基礎トレーニングをしているので、矛盾した言い方だなと思います。ハノン教則本をやった人なら理解できるはずです。

いずれにしろ、生楽器による音は、スペクトラム解析などの手法での研究が必要だろうと考えます。

現在のところ、調性というのは意味がないのではないかというのが私の考え方です。おそらく私の脳の老化によって絶対音感が失われた。それによって調性の感覚が崩壊した。そこから調性に対する認識が大きく変わったことだけは事実です。
2018.10.31 11:58 | 固定リンク | 音楽 | コメント (0)
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